考えたくもありませんが、派遣先の上司から肩をたたかれて「君、もう明日からこなくていいから」なんて、ドラマでしかなさそうなセリフを、突然、なんの前触れもなく浴びせられたらショックですよね。仕事上のミスもしていないならなおさらです。

なかなか実際にはこんなケースに遭遇することはないと思いたいのですが、ないとも言い切れないのも事実です。

2020年のコロナショックでは、観光業界や自動車製造業でも実際に前日に解雇を通達された非正規従業員も周りにいました。

派遣会社に保証の話をしても天災が理由として休業補償が全くないと言う方や、会社都合の休みだが振替休日を利用し、実際には休業補償が貰えないという方もたくさんいるようです。

2008年11月にリーマンショックが起きました。それを発端として、たくさんの派遣切りによって路頭に迷う失業者たちが出てきてしまったことを覚えている方もいらっしゃるでしょう。そのせいで住み家をなくしてしまい(派遣会社の寮から追い出されたなど)年を越せない危機的な状況の人もいて、それを見かねたNPOや労働組合などが協力して「年越し派遣村」を設置したというのを、ニュースで見た人もいるでしょう。

唐突に仕事を解雇されてしまうと給料が断たれ、生活基盤が崩れてしまう……考えたくもない悪夢です。

そもそも予告なしに派遣先が派遣社員を即日解雇をしてしまうのは法的に問題ないのか、そして最悪、もしそんな目に遭ってしまった場合に給料などの補償はあるのかどうか、また実際にこういったことに遭遇した場合の対処法をまとめてみました。

もし突然、解雇を言い渡されたら?

この手のトラブルでよく散見されるのが、派遣先の上司に突然、解雇を言い渡されるケースです。さて、実際に突然、まだ契約期間が残っているのに、途中解雇されそうになった時はどうしたらいいのでしょうか?

絶対にすぐに同意しない

突然、解雇通告されたとしても、その場ですぐに同意することは避けましょう。同意するための文章が出てきたとしてもすぐにサインをしないことです

派遣先から解雇を言い渡された場合は、同意をせずに状況確認も含め、なるべく早く派遣元にその旨を伝え、判断を仰ぎます。派遣元を交えて、なぜ解雇する流れになったのか「理由」を問いただしてよく話し合うことが肝要です。間違っても自己判断しないようにしましょう。

派遣元からの解雇通告でも、なぜ自分が解雇の対象になったのかという「合理的な理由」を説明してもらう必要があります。

契約期間中に解雇通告をする場合、最低限でも正社員同様に解雇される「合理的な理由」がなければできず、会社側でどうしても解雇をしたい理由があったとしても「会社側でどうしても契約を打ち切らなければいけない特別で深刻な理由」がないといけません。

突然そのようなことを言われたら、書類を持って帰って検討しますと伝えましょう!

試用期間中に、解雇通告なしに即日辞めてくれと言われた場合

試用期間中の14日以内には、即日解雇を言い渡すことができると主張される方もいるようです。確かに、試用期間中は法的には「解雇権留保付契約」の状態なので、広い意味で通常の解雇よりも自由に解雇できることが認められています。

しかし、だからといって無条件に解雇ができるというわけではありません。

試用期間でも労働の「契約」は成立しているため、やはり「客観的で合理的な理由」が必要です。就業するにあたっての能力や適性の不足を証明できるような「客観的かつ具体的な根拠」が必要になるのです。

そしてその理由が、一般人から見て「仕方のないもの」と納得できるようなものである必要があります(これを「社会通念上の相当性」と言います)。いずれにせよ、試用期間中に解雇を通告された場合でも、言われたからすぐに辞めるのではなく、きちんと雇用先(派遣元と派遣先を交えて)と話し合う必要があるということですね。

もしものときの補償はないの?

では、もし即日解雇になってしまった場合、なんの補償もないのでしょうか。

派遣先から解雇通告されたケースだと、心情的には派遣先に文句を言いたくなるところですが、派遣社員は派遣元と雇用関係を結んでいるため、善処の要求は派遣会社に対して行います。

派遣会社が派遣社員できる善処策は?

・派遣社員に新たな仕事先を確保する機会を提供する。

・新たな仕事先が見つからない場合、派遣会社は、本来契約していた派遣契約の期間終了までの間は『派遣会社側の理由による「休業」』として扱い、休業手当として、その派遣社員の平均賃金の60%以上を支給する。(※定められた契約期間を満了し、次の派遣先が見つかるまで待機の状態は除く)

・派遣会社がやむをえない事情で派遣社員を解雇することになった場合、30日以上前に通告し、30日の予告期間を置かない場合には、30日分以上の平均賃金を派遣社員に払う必要があります。

派遣社員は、派遣会社の契約期間が満了するまでの雇用義務にもとづき、上記のような適正な手続きを求めることができます。即日解雇になってしまったから何もないと即判断せず、このあとどうするか派遣会社とよく話し合うようにしましょう。

追記

新型コロナウイルス感染拡大により、経営悪化した企業による解雇や雇い止めが増加している。厚生労働省は2020年3月28日に、新型コロナウイルスの影響を受ける全業種の事業者支援として、雇用調整助成金の特例措置のさらなる拡大策を発表した。対象は同年4月1日からとのことで派遣会社に相談の上救済を求めやすくなった。しかし派遣会社がこの制度を使うことを嫌がる可能性がある。

派遣会社に相談してもダメな時、どこに相談したらいい?

万が一トラブルになってしまって、派遣会社に相談してもどうにもならない、困ったときは、公共の相談窓口に相談することを検討しましょう。

どこに相談したらいいか迷ったときは?

自分が暮らしている地域に、相談窓口を設けていることがあります。

相談窓口の住所・電話番号を調べたい時は、市町村が発行している「生活ガイドブック」(暮らしの便利帳などの名称で配られているケースが多い)で調べたり、市役所や町村役場の総合案内所に問い合わせてみるとよいでしょう。

また市役所や町村役場で、無料のパンフレットや資料を配布している場合もあります。各機関に相談する前に、まず電話で相談してみるとよいです。

どのような場合にどのようなケースでどの相談窓口を利用すればいいか。

・派遣労働について相談したい場合は……

→ハローワーク(公共職業安定所)へ

派遣法違反かどうか、相談に乗ってくれます。派遣社員の相談に乗ってくれる「労働者派遣事業適正運営協力員」という専任スタッフがいるようです。詳しくはハローワークに問い合わせを。

・賃金などの労働条件、労災保険の相談をしたい場合は……

→労働基準監督署へ

給料や勤務時間、休日休暇などの労働基準法に関係したトラブル全般についての相談にのってもらえます。

・労使関係、労働福祉、労働に関する問題などの相談をしたい場合は……

→労働福祉課、労働センター、労働相談情報センターなど

各都道府県で名称は異なります。さまざまな労働に関する相談事を聞いてくれます。

追記

新型コロナウィルス感染症の影響により、収入減少があった世帯の資金需要に対応するため、生活福祉資金貸付制度の緊急小口資金及び総合支援資金(生活支援費)について、特例措置が設けられました。

まとめ

ネットを散見すると、いろんな解釈がはびこっていて、判断に迷います。中途半端に自己判断してしまい、最終的に泣き寝入りしてしまうのも精神衛生的にもよくありません。

解雇にいたる状況もケースバイケースであることから、本当に困った場合は、一人で悩みを抱えずに専門的な知識を持った第三者に相談するようにしましょう。意外な方向にむかって良い結果になることもあり得ます。

非正規で働いているから自己責任という風潮があるのが事実ですが、困っていることを相談できる制度は積極的に使い生き延びましょう!

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